夢から覚めて
土曜日が過ぎて、日曜日が過ぎて、また新しい一週間を迎えた。蓮と尋斗には清宮が三人目であること、そして、三つのデータのうちの一つが奪われてしまったことを話した。
あの夜のトリックも話したが、どうやって奪われたのかは話さなかった。気になるらしいが、俺に気を遣って深くは問わなかった。
いつも通りの日常。
ホストとして接客をして、酒を飲んで、客を口説いて、三人に注意しながらこれ以上データを奪われないように気をつける。
何も変わらない日常。
たった数日前の生活に戻るだけだったのに、ぽっかりと胸に穴が空いたようだった。
データはともかく、何も得ていないんだから何も失っていないはずだ。なのに、何かを失ったように寂しくて、虚しくて、苦しくて、悲しかった。
浴びるように酒を飲んでも、心が晴れない。上等な女の唇に噛み付いて、愛を囁いたところで心の中は冷めきったままだった。
だが、何かを楽しみに待てば待つほど時間が過ぎるのを遅く感じるくせに、来てほしくない日に限ってあっという間に訪れてしまう。
先週までは金曜日を楽しみにしていて待ちきれないほどだったのに、今週は心の整理すらつかないまま、どういう顔で清宮を迎えるのかも決められないまま木曜日になってしまった。
(明日なんて、来なければいい)
…明日は、大嫌いな金曜日なんだから。
(絶対に来るんだろうな)
試験終了までの最後の週末。
清宮が金曜日以外で来るのは不自然だから、明日はまた俺を指名して情報を手に入れようとするはずだ。限りなく本物に近い偽物の愛を囁きながら。
あんなに心地よかった言葉が、声が、その下に隠された本意を見た途端にとても嫌に感じてしまった。聞きたくない。逃げてしまいたい。
職業柄偽物の愛には慣れているのに、清宮に限ってはその偽物の愛が心を深く突き刺し、抉るナイフのように鋭く、冷たく感じた。
その理由は、たぶん、
(本気で好きになったからなんだろうな)
[ 128/224 ]
prev / next
[ mokuji / bookmark / main / top ]
騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。