2.
いつから清宮に惹かれたんだろう。
いつから心が傾き始めたんだろうか。
分かっているのは俺が気付かない間にじわじわと外堀から埋められてしまっていたことで、気が付いてももう逃げられないようだ。
蜘蛛に囚われた蝶、だなんて被害者ぶった言い方をするつもりはない。どちらかと言えば、蜜に誘われる蜂のように自ら擦り寄って、その甘い甘い感情を欲していた。
「慧、本当にお前から目が離せなくなったら責任を取る、と言ってたな?」
「あぁ、」
「…責任取れ」
ふっ、と清宮が目を細める。
年相応の無邪気な笑みが綺麗だと散々思っていたが、この笑みはクラブにいた時に負けず劣らずの色っぽい笑みで、捕食されるようなぞっと背筋が震えてしまうほどの強烈な色香を放っていた。
「最初からそのつもりだ」
ちゅ、と首筋にキスが降る。
「近くにホテルを予約した」
「うわ、最低。告白してすぐこれかよ。お前の責任の取り方って、これ?」
笑いながら冗談めかして言う。
悔しかったんだ。年下に呆気なくコロッと落とされて、告白まで先にされて、逃げられなくなって、だから、せめて最初くらいは年上の余裕でからかいながら俺の方から誘いたかった。
「お前だって、雨の中でまた外に出て、運転席に入るのは面倒だろ?」
「っ、コウ、」
「俺はホテルまで待てるほどイイコじゃない」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。