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嘘つきの唇


「コウ、…さっきの本当か?」

清宮に引っ張られながら走って、二人で車の後部座席にもつれ込んで、車にあったタオルで自分じゃなくて俺を拭きながら清宮が聞いてきた。

髪や服は濡れてしまったが、幸いにも車がそう離れたところにあるわけじゃなかったから、全身すぶ濡れにはなっていない。それに土砂降りといっても初夏の雨だ。冷たくはなかった。

「俺は自分で拭くからお前も自分を拭け」

「コウ?」

「…あぁ、本当だ」

そう言えば、清宮に抱き締められた。

ぎゅっと逃がさないように抱き締めるのではなく、存在していることを確かめるような抱き締め方。濡れた髪を何度も撫でてくれる温かい手。

「すげぇ嬉しい…!」

幸せを噛み締める声だった。

「夢じゃねぇよな?」

「抓ってやろうか?」

「リップサービス、じゃないよな?」

「あぁ、誓う」

そして、またあの綺麗な笑み。

清宮は俺の笑顔が綺麗だと言っていた。だが、こいつの笑顔は恋愛に慣れたホストも、駆け引きに慣れた情報屋も本気で惚れさせてしまうんだから、余程強力でタチが悪いと思う。

清宮の頬に手を添え、キスをした。

「好きだ、慧」

それは心からの言葉だった。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。