13.
「言い訳じみてるんだが、コウ、…今日はいつもより綺麗に笑ってた」
思わず足を止めた。
清宮も止まったが、言葉は続いた。
「お前さ、クラブでも笑うんだが、接客用っぽい感じだったんだ。だが、今日は心の底から楽しそうに声に出して笑ってた。…綺麗だった」
「っ、接客用…」
自覚なかったが、言われてみればそうだ。
どう笑えば色っぽく見えるか、どう動けば客ウケがいいか、クラブでは癖のようにそんなことばかり考えながら笑い、話していた。
今日はクラブから離れたこともあって、一緒にいるのが清宮ということもあって、外出していても接客であることを忘れてしまって、いつの間にか俺が楽しんでしまっていたんだ。
しかも、
(妙な気持ちを自覚させられたな)
俺の心を金で買えるなら、どれだけいいだろう。
かつてこう言った御曹司様は、安っぽいデートで見事に俺の心を奪ってしまったわけだ。
で、挙句の果てに、
「客の遊びだって思うかもしれねぇし、年下の癖にって思うかもしれねぇが、…コウ、俺は、お前が本気で好きだ。付き合ってほしい」
俺よりも先に告白しやがった。
年上の威厳も何も尊重することなく、というより、俺が接客用の、売り物用の愛情で接していると思っているだろう清宮は、見ている俺が逆に困るほど緊張しきった表情で俺を見ていた。
見たこともないほどの真摯な眼差し。そして、清宮も不安になるんだ、と初めて知った。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。