9.
「本当に二人っきりだよな」
「だからここにしたんだよ」
コンビニの袋を渡される。受け取れば、清宮はまた何かを取り出した。よく見ればそれはビニールシートで、また笑えてしまう。
運転を終えて眼鏡を取ったことが、少し残念だ。
「っ、遠足を、思い出すんだが…!」
「んだよ、昨日は楽しみで眠れなかったって?」
「違う。お前が、…ふっ、用意周到だから、」
「お前、それ以上笑うと猫耳アイマスクの画像をお前の店でばらまくぞ。マジだからな」
「それは、無理。やめろ。つか消せよ!」
今日はよく笑ってる気がする。
清宮は僅かに目を細めて俺を見ていたかと思うと、ふと俺の頬に両手を添えた。それだけで次の動作を予想して大人しく目を閉じれば、少し顎を持ち上げられて唇に柔らかい感触がした。
ちゅ、ちゅ、とそれは小鳥のように啄み、感触と温度を楽しんだだけで離れてしまった。
手が離されたのを合図に目を開けると、清宮が驚いたように目を丸めていて、そして、満足そうにふっと目元を緩めた。
「お前がキスで目を閉じたの、初めてだ」
「…そうか?いつもは閉じてなかったか?」
「いつも大人しくキスされてくれるのに、目だけは警戒してるみてぇに見てくんだよ。俺が手で目を隠さねぇ限り、ずっとそれ」
「…自覚なかった。ごめん、」
「別に?」
じゃあさ、と清宮が一度言葉を切る。
俺を見た目に、らしくもない緊張が見えた。
「…もう一回キスしねぇか?」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。