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8.


「着いたぞ。降りろ」

ついに止まった車。アイマスクを外すことを許されないまま、外から助手席のドアを開かれる。すぐ近くに清宮の声が聞こえて、エスコートのように手を握られて優しく誘導される。

いいと言うまでアイマスクを外すなと言われたが、助手席のドアが開いた瞬間にここがどこなのか分かってしまった。

打ち寄せる波の音。潮の香り。

(海だ…)

だが、気付いたことは内緒だ。

清宮の手に従って車から出る。二、三歩移動したところで後ろから抱きしめられた。そして、耳元で悪戯っぽい声が囁いてくる。

「もういいぞ」

その言葉を合図に、アイマスクを取った。

途端に息を呑んだ。海だとは分かっていたが、ここまで綺麗だとは思わなかった。

夜の海は揺らめいて、ざあ、ざあ、と何度も波打ち際に押し寄せては引いていく。満月が明るすぎるからか、暗い夜でも水平線ははっきり見えて、海面と砂浜が照らされていた。

淡く光るような泡が波打ち際で弾ける。綺麗な水を通して月の光が砂に映す水の模様。

穴場だからか、人は少なくて、遠くの方で花火をしたり散歩をしている人がぽつぽつといるだけだった。広い道路もなくて、音といえば波の打ち寄せる音しか聞こえない。

「気に入ったか?」

目を奪われて、小さく頷くので精一杯だった。

海は好きだ。だが、来る機会がなかった。

仕事が忙しいし、彼女もいないから誰と来ればいいのかも分からなかった。だから、清宮が俺を海に連れてきてくれたのは意外で、…嬉しかった。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。