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3.


「皆卒業おめでとぉー!」

卒業記念アルバムが入ったスクールバッグも、今日限り使うことはないだろう。

桜並木の傍にある通学路も、思い出が詰まった制服も、大切な仲間達の顔も、明日になれば見れなくなってしまう。

大学は受けなかった。勿体ないとは言われたが、誰も俺を知らない遠くの地に行って、小さな喫茶店をひっそりと営もうと思っている。

両親に頼らないためにまずは資金集めから始めなければならないが、それは別に苦だとは思っていない。仲間に会う機会も少なくなるだろう。

「落ち着いたら連絡するんですよ?」

「副会長心配しすぎだって」

「どこかで野垂れ死ぬんじゃねぇぞ」

「何それ笑える」

「あ、りえ…る…、骨、拾う」

「いやいや、ないから!ていうか、骨を拾いに来るくらいなら助けに来てよ」

馬鹿を言い合うのも今日までで。

明日はそれぞれの道を歩み始めていて。

三月の温かさが混じりはじめた風は、薄紅色の桜の花びらをさらっては、するりと優しく頬を撫でて駆け抜ける。

それはまるで俺を慰めてくれているようで、たまたまボタンに引っかかった花びらを取って息を吹きかければまた舞う。

ひらひら、ひらひら、と。

俺の周りで円を描くように。

一通り写真を撮って、一通り挨拶をして。育ちのいい友人達が迎えの車に乗っていくのを笑いながら見送って。ついには一人になってしまって。

寂しいのに、寂しくてたまらないのに、昨日より肩が軽くなった気がした。

その時だった。

一陣の風が、吹き抜けたのは。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。