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6.


そして、二日目も快晴だった。

二日目の朝の相手は普通の男。普通すぎて特徴が見当たらない。会ったとしても記憶に残らない影の薄さだ。スパイに向いていると思う。

ペコリ、と礼をしてきたが、俺もイチルも気付かずに、結局五回くらいペコペコされた。イチルが一度だけ礼を返したが、その表情がものすごく微妙そうで笑えた。

彼の聖獣は山羊らしい。どこを見ているかいまいち分からない目で、のんびりと草を食べながらぼんやりと立っている。

「コイツどうやって勝ち上がってきたんだ?」

『お前は自分の胸に手を当てて、自分の心によく聞いてみた方がいいよ』

開始の合図が聞こえた。

いくら見た目があれでも、一応は二試合勝ち上がってきたからイチルは剣を構えた。だが、やはり鞘から抜かないあたりまだ余裕があるらしい。

俺は飛んでいって、山羊の頭の上に着地した。

その際に山羊が食べている草を一本拝借して、嘴で咥える。山羊の頭に鎮座してその草を目の前で振ってみせれば、メェと一鳴きして山羊は草を食べようと歩き出した。

だが、どれだけ歩こうと俺は山羊の頭にいるわけで、山羊が移動するのと同時に草も移動しているわけで、どれくらい歩いても食べられない。それをいいことに俺は草の方向を調整して、山羊をイチル達から遠ざけた。メェメェと鳴かれる。

イチルの方を見ると、勝負は呆気なく着くようで、既に相手の背後を取って剣を振り上げていた。相手が振り向く前に、剣を振り下ろそうとした瞬間、山羊が思いっきり鳴いた。

『だメェェエエエェエエ!!!!』

だが、それでイチルが止まる筈もなく、剣の鞘は見事に相手の後ろ首を強打した。男の人が倒れる。

終了を知らせる破裂音がした。戦闘不能で俺達の勝ちだ。契約主の元へと向かう山羊に振り落とされた俺は、イチルの肩に飛び乗った。

『ダメって、ダメって…』

「え、そこツボに入った?」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。