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3.


「なぁ、ガキ。見たところお前弱っちぃそうだから、お前に有利なやり方で勝負してやる」

「は?」

口を半開き、胡散臭そうな顔の男の子。

うん、当たり前の反応だ。というより、イチルが詐欺とか恐喝とかそういうことをしているチンピラにしか見えないのはどうしてだろう。

イチルが男の子の前まで行って興味深そうに花を覗き込めば、鉢植えの中にいた花は恥ずかしそうに口を閉じ、葉っぱで花びらの部分を隠し、茎(くき)をくねらせた。

(うわ、何あれ、ムカつく!)

何あの女子高生みたいな反応。

いくらイチルが美形だからって、俺の時と態度が違いすぎてウザイんだけど。しかも、顔(花びら)を隠しているように見えて実は指(葉っぱ)の隙間からしっかり見てる。

そう思っても、高度3mから降りて文句を言う勇気はない。安全第一、うん。

「平和的解決でいくぞ。ほら、最初はグー」

「え、ちょ、待っ、え、えぇえ!?」

「ジャンケン」

『この世界にもジャンケンあるの!?』

そう叫んでしまったのは不可抗力だ。

あたふたする男の子。男の子があたふたして手を出そうとするから、落ちそうになって男の子の首に葉っぱでしがみついている花。落とせ、と思いっきり念じた俺は悪くない。

だが、悪役顔をしていたイチルが出したのはグーでも、チョキでも、パーでもなくて、そのまま流れるように剣を鞘から抜いた。

そして、呆然とする男の子に向かって切り上げ、

『やった!』

手首にあったプレートを通している紐を切った。

重力に従って落ちていくそれを、高い位置にいた俺がさらに速い急降下をして捕まえる。そのプレートをイチルに渡した瞬間、またもや破裂音がした。試合終了だ。

『汚いんだけど』

「平和的解決だろ?」

こうして、初戦は突破した。別に嬉しくない。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。