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2.


初戦の相手は学生っぽい男の子だ。向こうの世界で言えば高校生くらいで、イチルより年下。

純粋そうな顔をしていて、植木鉢に入った花を持っている。気のせいか花びらが微妙に唇に似ているその花はぽよぽよと揺れているが、あれは聖獣じゃないと思いたい。

開始の合図にパン、パン、と破裂音がする。

男の子は緊張した面持ちでこちらを警戒していて、動かない。ただ花だけがぽよぽよとどこまでもマイペースに揺れていた。

「え、あいつに剣を抜かなきゃなんねぇの?」

『他の方法で勝負を決められるなら、どうぞ』

「年下をいじめる趣味はねぇんだけど、」

『なら、平和的解決で』

まぁ、この一言がイチルにとんでもない行動に出させてしまったわけだが。

とりあえず、飛んで花を観察してみることにした。結構近くまで行ったが、人畜無害で攻撃力底辺の小鳥が偵察に来たところで男の子が警戒する筈もなく、軽く眺められただけだった。

だが、俺が花の中を覗き込んだところで、それはパックリと口を開けやがった。

『うぇ!?』

真っ赤な唇の中に、真っ白のギザギザの歯。

『…お、い、シ……そぅ、』

と聞き取りにくい声がしたかと思えば、噛み付いてきた。だが、相手は花で、飛んで花が届かないところまで逃げれば俺の勝ちだ。

『あーァ、…朝、ご、はん…逃げた、』

物騒な呟きを聞きながら半泣きで飛ぶ。俺だって朝は結構食べた自覚があるのに、この花は俺以上に大食いで肉食らしい。

今すぐイチルのポケットに避難したかったが、そうすれば絶対いじられるから気力で飛び続けた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。