「ちょろいな」
そう言ったイチルの声は、今までに聞いたことがないほど楽しげで上機嫌だった。
店主がくれた参加証明であるプレートをクルクルと回転させながら投げる。銅でできたそれは鈍い光を出すも、回転のスピードによってキラキラと綺麗に見えた。何回か投げあげて、元の位置まで落ちてくる前にイチルが掴んだ。
『もう嘘八百だったね』
「背に腹は変えられねぇんだよ」
明日の朝に初戦。三日目の夕方に決勝。もちろん、勝ち上がりのトーナメント戦だから負けた時点で脱落が決定する。
勝つ方法は五つ。相手に降参と宣言させる、決められた範囲から外に出す、戦闘不能にする、プレートを奪う。どれか一つで勝負を制する。因みに試合前の棄権も不戦勝として数えられるが、使う選手はあまりいないのが現状だ。
それ以外はまさに無法地帯。魔法でも、剣でも、取っ組み合いでも勝負を決めていい。
そして、この属性がこのブロックなどとは決められておらず、完全にランダムだ。
「お前は相手の聖獣を押さえとけ」
『無茶言うよね、イチル。でも、まぁ、任せて』
今なら出来そうな気がするから。
「無茶はすんなよ」
『もうこの要求が無茶だよ』
俺はイチルと契約したかった。
だが、契約できなかった。
それでも、一緒にステージに立って、一緒に戦うということはそこに絆が存在するようで、誰かに認められる気がした。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。