「イチル、変わったね」
「そうか?…俺は俺だが、」
「うん。強くなった」
昔より強く、格好良くなった。だが、その言葉にイチルの紅蓮の瞳は真摯な光を携えた。
あぁ…、その光の強さに魅せられて、引きずり込まれそうだ。眼差し一つで高鳴る胸を抑えていれば、ちゅ、と騎士達には見えない位置で耳朶に啄むように優しい口付けが落とされた。
「俺は、…お前を守れるほど強くなったか?」
それに対する俺の返事は決まっていた。
「お前に守られるほど俺は弱くないよ」
だから、互いに支えて生きていこう。
王者の資格、それは一体何たるか。
ずっと、ずっと考えていたことだった。
力ある者のあるべき姿を、力の使い方を。
王座を望む者は力に伴う重責も、民の命の重みも担わなければならない。王冠というものは揺るがない覚悟をもって初めて輝きを放つ。
民を見守り、世界を支える柱の一つとして気の遠くなるような時間を過ごしていく。だが、本来は孤独である時間の中で、大切な人と命を共有できる俺はなんて幸せなんだろう。
闇が深いほど光の輝きが際立つ。
絶望に呑まれた真っ黒な夜で俺に道を指し示してくれた一縷の光は徐々に強さを増し、ついには世界を明るく鮮やかに照らし出した。
この光が俺に世界を見せた。
この光こそ俺が愛する世界だった。
共に飛ぼう、この広大で自由な空を。
運命に託された未来を希望が満ち溢れたものにして、この世界を人間も聖獣も精霊も笑いあって、幸せに過ごせる平和な場所にしよう。
ねぇ、俺の、俺だけの光。
お前と見たあの朝焼けを、希望が絶望を打ち破るあの瞬間を、俺は一生忘れないよ。
だから、これからも俺の傍で輝いていてほしい。
(HOPEACE 完結 2017.11.11)
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。