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18.


「しかし、驚いたな。先を越されてしまった。…お前が私を殿下と呼ぶのなら、私はお前を陛下と呼ばなければ。ウィンソフィリア陛下?」

「俺もまさか本当に神託通りになるとは思っていませんでした。似合いませんよね」

「いや、お前はよくやっていくだろう」

越された、という割にはカルナダさんは悔しそうにしていない。むしろ、イチルの軍服姿を上から下まで眺めて満足そうにしていた。

今日のイチルは本当に格好いい。

見慣れた俺がそう断言する。部屋の中にいる騎士や使用人の眼差しを奪ってしまうイチルは、独占したくなるほど魅力的だった。

その晴れ姿をじっくりと眺め、カルナダさんが柔らかく目を細める。そして、少しだけ俺達との距離を縮めると、内緒話のような小さな声で俺達だけに聞こえるように言った。

「二人の時は兄様って呼ぶんだよ?」

イチルも照れ笑いをして、

「そのつもりです」

はっきりと答えた。

温かい雰囲気のところ悪いと思うが、俺はカルナダさんの言葉に思うことがあった。

「ちょっと、二人の時ってなに?俺の前でも兄様って呼んでいいんだよ?可愛いし」

「可愛いって、お前な!」

そして、さらに便乗する人達がいた。俺達の後ろに立っていたホーリエとオーツェルドだ。空気中に溢れ出した水から姿を現したマーメイドも、微笑ましそうにイチルを見ている。

「僕の前でもいいよ」

「俺も構わねぇぜ。いやぁ、最近のイチルは素直っていうか甘えたっていうか」

『私もよ。仲間は兄弟って知ってるんだから気にしなくてもいいわ。それより、今はたぁっぷりとカルナダ殿に甘えてね!』

皆の声色にからかいが混じる。

甘えるという言葉に、イチルが否定する。だが、騎士団がいる手前大きな声が出せなくて、仲間達をじとりと睨んだだけだった。

だが、内緒話をして笑う国の要人達に首を傾げる騎士達をよそに、空気の振動でもある音に敏感なペガサスだけがクスッと小さく笑った。

レイロさんは不思議そうにしていたが。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。