「武闘大会?」
この町で武闘大会が行われる。
参加者を四ブロックに分け、それぞれのブロックでトーナメント戦を行うらしい。五試合勝ち続ければそのブロックの勝者になる。六試合目は決勝で、ブロックごとの勝者四人全員で乱闘が行われる。
魔法でも、剣でも何でも使って構わない。そして、さらに目を引く記述があった。
『賞金、金貨一袋だって…』
それだけあれば旅に困らない。
『でも、これ申し込みが今日の夜までだ!』
「大丈夫だ。充分間に合う」
だが、参加条件まで見た時、希望を見出しかけた俺達は、どちらからともなく口を閉ざした。参加条件、聖獣と契約していること。
一気に沈黙が降りる。今すぐ申し込めば、明日の朝から開かれる大会に間に合う。午前と午後で一試合ずつ、つまり、一日に二試合進むから三日後の夕方には勝者が決まっている。
そこで俺達が勝てばギリギリのタイミングで宿に泊まる金が出来るのに…、これでは勝ち負け以前の問題だ。勝負台にすら上がれない。
「聖獣か…」
小さな呟きの後、青の目が俺の方に向く。
「契約つったって、要はいりゃあいいんだろ?」
ニヤリ、と今から討伐しに行く魔王すら真っ青になりそうな悪どい笑みを浮かべながら、イチルは指先で俺をつついた。
ゲームの世界なら主人公の勇者という立場にいる王子様は、今確実に三流の卑怯な悪役の顔をしている。しかも、その顔がよく似合っていた。
『え、』
「やったもん勝ちなんだよ」
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。