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路銀を求めて


『イチル格好よかったよ。けど、あの金貨…』

「言うな。分かってるから」

『路銀だよね?これからどうするの?』

「…………考えてねぇな」

二人揃ってしばらく遠い目をした。

資金がなくなることは旅の命取りになる。

宿は事前に三泊分の料金を払ったからいいものの、今俺達の所持金はイチルのポケットに入っている銀貨一枚と銅貨三枚しかない。四日食べられればいい金額だ。

イチルに働いた経験もなければ、もちろん、城に戻ってカルナダ様に助けを求めるという情けない選択肢を選べるわけもない。

もう路頭を迷いそうだ、王子様もろとも。

「はぁ……、」

イチルの溜め息が冗談じゃなく重たい。

「最近、肉付きよくなったよなぁ、」

そう言って俺を見る目に本気さが滲んでいるような気がして、俺は慌てふためいてイチルの手が届かない窓の縁まで飛んだ。ニヤリ、と口角を吊り上げるように笑われて、思わず落ちそうになる。

文句を言おうと口を開いたその時、開け放たれた窓から聞こえてきた騒がしい声に、言葉を飲み込んだ。やたらと野太い喧騒は、表の道で紙を配っている人が中心になっている。

配っているのはチラシらしい。その人の周りには男達が集まって、チラシを受け取っていた。

『あれ何?』

「ん?どうした」

窓から飛び出して、男の人の頭の上に飛んでいく。

『俺にもちょーだい!』

そう言えば軽く驚かれたが、快く一枚渡してくれた。それを足でしっかり掴んで部屋に戻る。ひらり、と落としたそれをイチルが掴む。そして、また肩に乗って、一緒に覗き込んだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。