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15.


そう言い残し、ドラゴンが飛び去った。

(どうか幸せになりますように)

二人の未来を願わずにはいられない。

別々の未来を歩むにしろ、愛を誓い合うにしろ、本人達が納得して後悔のないようにしてほしい。俺の勝手で言えば、嫁いできた姫君には申し訳ないがドラゴンとカルナダ様が結ばれてほしい。

世界がなんだ、理がなんだ。あんなに心の深くで互いを愛し合う彼らには運命も、世界の理も、自然の摂理も破る力を秘めている。

俺はそう信じている。

だから、もし彼らが助けを必要とした時はまっさきに駆け付けて、結ばれた時は祝おう。

(頑張りなよね!)

ドラゴンを見届けて、俺も飛び立つ。

今頃、イチルは既にカルナダ様と会っているだろう。騎士団や国の要人が揃っている中で、イチルに聖獣が不在というのは格好がつかない。

イチルの魔力を頼りに居場所を探す。

そうすれば見付けたのは城の中心部にあるとても広い部屋で、開けっ放しの窓から中に入った。天井の高いその部屋は荘厳で、春先の優しい陽射しが窓ガラスを通って大理石の床に伸びる。

やはりというか、一番最初に俺に気が付いたのはイチルだった。ルビーの瞳が見上げる。

────待った?

────そんなに。レイロと少し話をした。

そして、鳳凰の影が床に伸びたところでたくさんの人が俺を見上げ、溜め息を漏らす。畏怖というか畏敬というか、始祖にその眼差しを浴びながらイチルの元に向かい、人間の姿になる。

恥ずかしいばかり言ってられない。俺にだってきちんと決めなくちゃならない時がある。

「お待たせごめんね、カルナダ様」

ふわり、とマントが翻る。

俺も軍服を着ているが、マントは短めだ。腰に生える翼を考慮して腰より少し上までで、利き腕である右手の動きを邪魔されたくないという俺の要望により、マントは左側にしかない。

その代わり見栄えとホーリエが言い続けた結果、マントは若干左肩を覆っている。

上品な軍服だが、イチルみたいに襟元をしっかり閉めるタイプじゃなくて立襟のかなり開いたタイプ。その下はベストとシャツ、ネクタイ。

若干スーツみたいなデザインはこの世界では見ないが、たまたま俺の高校の制服を見て気に入ったホーリエが強く主張し、採用となった。

本当ならマントと左襟元か、もしくはネクタイの場所に銀色の鎖があった。だが、自由な空に拘束を連想させる鎖は似合わないというイチルの意見により、俺の衣装に鎖は一本もない。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。