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14.


『僕はカルナダを通して別の人を見ていたよ』

『え?』

『身代わりとして見ていた…』

ドラゴンが城の方を見詰める。

カルナダ様の姿なんて、こんな遠くから見えるわけがないのに、じっと視線を逸らさずに見詰め続けていた。遠くを見る瞳が懐かしむように細まり、ついには伏せられて視線が沈む。

『でも、カルナダを失った今、そうじゃないと思い知ったよ。彼と違うところばかり思い出して、…苦しいほど愛おしいんだ』

『…そう』

『カルナダはカルナダだ』

はっきりと断言する言葉。

カルナダ様を通して見ているというその人物の影が薄まることはないかもしれない。だが、カルナダ様はドラゴンの心に確かな重みを残し、ドラゴンは今の愛する人が誰かを思い知った。

今はそれで充分なのだろう。そして、時間が経ち、ドラゴンが心に従って自分の答えを認識し、カルナダ様がもし幸せになれなかったら、

(その時は、きっとこの二人が幸せになる)

その日は来ないかもしれない。

カルナダ様は幸せな家庭を築き、夫婦仲睦まじく幸せに過ごし、子宝に恵まれる。ドラゴンは雷の王としての治世をまっとうし、遠くからカルナダ様を見守るだけで終わってしまう。

そんな未来もありえる。人間としての、聖獣としてのあるべき未来に進むか。それとも、世界の理に逆らってまで全身全霊で愛するか。

どちらが幸せかは、俺には言えない。

未来を決めるのも、いつかの終焉に答えを出すのも、俺じゃなくて彼らだからだ。

『君に誓おう、同胞。僕は後悔する道だけは決して選ばないさ。だから安心するといい』

『それ、信じてるからね?』

『あぁ』

そこまで言って、ドラゴンが翼を広げる。

彼の翼の黄金色の鱗が陽の光に照らされて上品に煌めく。なのに、風を切るそれは力強かった。バサ、バサ、と舞い上がって、ドラゴンはもう一度だけ城の方を眺めて言った。

『さて、僕はもう失礼するかな。カルナダの結婚式を見ていくつもりはないんだ』

『また会える?』

『勿論さ。君が望めばいつだって』

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。