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13.


『確かに君の言う通り恋愛感情はないかもしれないけど、結ばれた相手を好きになるのだって素敵で、幸せになれると思うよ』

『…でも、好きになった相手と結ばれなかった事実は痛みとなって残るだろうね』

『っ、』

ビクッ、とドラゴンの肩が跳ねた。

その顔に色々な感情が移る。愛したいという熱情。愛してほしいという渇望。他人に渡したくない悔しさ。そして、失う恐ろしさ。

長く人間を見てきたからこそ彼らの短命さを思い知っている。怖いという感情に共感はできる。だが、その恐怖を乗り越えなければ得られないものもあるわけで、短命だからこそ精一杯愛し、愛されないと勿体ないと思うんだ。

そして、カルナダ様とドラゴンが実は相思相愛だからこそ、さらに勿体ないと思った。

『人の命って短いよ』

『知ってるさ』

『だからこそ、俺達が後悔してやっぱり愛したいって思った時には、もう既に逝ってる』

『…僕は、後悔しない』

『何を根拠にそう言いきれるの?』

あからさまに彼の視線が逃げていく。

だが、結局どんな答えを出すのか、どの道を選ぶのかは本人次第で、俺が強制することじゃない。考えるのも、選ぶのもドラゴンだ。

答えを出すにはまだ時間が必要だろう。俺みたいに人に混じって育ったんじゃない生粋の聖獣の王が、人間を愛し、一緒に歩む決意をする。それは決して簡単な覚悟じゃない。

だが、時間はあまり多くはない。

それでも、彼がカルナダ様の契約聖獣の座を他の聖獣に渡そうとしない限り、きっとカルナダ様を諦めたわけじゃないだろう。

『時間が欲しいんだ』

『そう』

『僕らのあり方を考え直したいし、いずれやってくる最期の決別を受け止められるほど、今の僕は強くないのさ。…怖いんだ、とても』

彼の体が小さく震えた。

だが、励ましを言うのも、抱き締めて温もりを分け与えるのも俺の役割じゃない。

決して寒さのせいじゃない小刻みな震え。だが、彼はそれでも視線を俺に戻し、まっすぐ揺らぎない瞳で俺を見据えて言い放った。その言葉はとても真摯で、強い覚悟を携えていた。

『もし、カルナダが一度でも涙を見せたら、…その時は僕がさらってみせるさ』

もし、あの姫と幸せになれなかったら。

不幸を願っているわけじゃない。あの二人は互いに優しくて性格もよく、お似合いだ。仲睦まじく、幸せな家庭を築くと願っている。

だが、もしも、万が一の可能性でカルナダ様が泣いてしまったなら、幸せになれなかったら、

『僕が幸せにしてみせる』

その瞳にあるのは強い決意だった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。