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12.


『独占欲とかってわけじゃ、』

『じゃあ、あの魔力は?自分が契約しないなら他の聖獣に譲りなよ。その方がカルナダ様にもいい。王様には契約聖獣が必要なの』

『ぼ、僕は…、カルナダのことなんて…』

歯切れの悪い言葉だった。

ドラゴンを見ていて思うことがある。

彼はあまりよく人間という生き物を分かっていない。俺がそう思えるのは俺が恋人と心を通い合わせたからかもしれないし、自分が人間だと思い込んで育ったからかもしれない。

楽しいことも悲しいこともはっきりと示す聖獣達とは違って、人間は心を押し隠し、言葉と表情で仮面を作って嘘をつくことがある。

カルナダ様は平気そうだ。

だが、その胸中が本当に平気かどうか、次の契約聖獣を見付ければいいと簡単に考えているのか、俺に言わせれば答えは簡単だ。

だが、目の前のこの聖獣はカルナダ様のずっと祖先がいた時代から、気の遠くなるような時間を生きてきたのに、人間のそういった感情にはひどく疎かった。長く生きてきた割には、人間と多くの交流を持たなかったからだろう。

それどころか、彼は自分の感情にも鈍かった。

『そう?じゃあ、力の強い聖獣がいたら、カルナダ様に紹介しちゃおうかな』

なんて言ったら、

『ダメだ!!』

ドラゴンが大きく吼えた。

キッ、と強く俺を睨み、翼を広げて威嚇する。

『カルナダは僕のだから!!』

『…ほら、自白した』

楽しくてクスクス笑えば、ドラゴンの翼は畳まれずに垂れる。誘導されたことに恨めしげに俺を睨み、軽く尻尾で壁を叩いた。といっても、本気で怒っている様子ではなかったが。

『大事に思ってるなら行動しなよ。明日が戴冠式、明後日が調印式、一日空いてその次に結婚式。取られちゃってもいいの?』

『人間には人間の生き方があるのさ』

『その生き方を捻じ曲げてまで、誰かを愛し抜きたいって思うことだってあるんだよ』

『あの姫君はいい子だ。カルナダだって大切に思ってるだろうし、幸せな家庭を築く』

『その大切は愛情って意味じゃない』

イチルが教えてくれた。

隣国の末の姫君は確かに穏やかで優しい女性だが、カルナダ様とイチルの妹同然に育ち、家族のような親愛の感情はあっても、互いに恋愛という意味での愛情は抱いていない、と。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。