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11.


黄金色の塊は必死にパタパタと翼を動かして逃げる。だが、全快の俺からしてみれば余裕で追いつける速度で、先回りして彼の目の前に移動すればペタリと困ったように彼の耳が伏せた。

『なんで逃げるの?』

少し責めるように言って近くにあった塔の上に着地すれば、彼、ドラゴンも溜め息を吐きつつ少し離れた場所に着地した。

『いや、普通に気不味いだろう』

『え、全く?』

けろりとそう答えると呆れたように半目になって、ドラゴンの尾が力なく垂れる。

俺は跳ねながら彼に近付いていく。今となっては小鳥の体に違和感もなく、跳ねて移動するのも尾羽でバランスを取るのも慣れたものだ。

『僕は君を殺そうとしたんだよ?』

『それにはきちんとした理由があるでしょ?最後に謝ってくれたし、もういいよ』

あの時の声は今でも思い出せる。

悲しくて、切なくて、寂しくて、苦しい声。絞り出すように弱々しく、今にも泣きそうな声で謝ってきたドラゴンを恨めるはずもなかった。

それに、彼は正しい行いをした。堕ちかけた俺を消すのは当然の判断で、結果的に言えば助かったが、それでもドラゴンは世界を守る王として全うな重責を背負って行動していた。

怖くなかったと言えば嘘になる。

だが、それはもう過ぎた話で、目の前の彼が怖いかと聞かれれば答えは否だった。

『でさ、なんでカルナダ様のストーカーしてんの?あ、実はよりを戻したいんでしょ』

『はぁ!?ぼ、僕は別に!!』

今度は耳をピンと立てる。

だが、むしろ焦った様子が怪しく思えて、俺は畳み掛けるようにドラゴンに言った。

『あの魔力、独占欲?』

よりを戻したい、と言ったことには実は理由がある。ドラゴンがカルナダ様を愛し、契約を切ったところで諦めてはいないと知っていたが、それだけでは別の根拠が俺にはあった。

ドラゴンの魔力だ。

人間には感じ取れない程度の微量の魔力だが、カルナダ様の体に絡みつくように張り巡らされていた。俺も、もし昔のように未熟だったら分からなかったほどの繊細な魔力の糸。

それはドラゴンの魔力で所有を表すように、マーキングをするように、カルナダ様を誰かに譲るつもりはないと他の聖獣を威圧する。

召喚陣が現れたところで、向こうにいる人間は雷の始祖が所有を主張している。聖獣界最強の始祖に喧嘩を売れる強者はいない。

これがカルナダ様が召喚に失敗する理由。

カルナダ様自身は気付いてないが。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。