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10.


『我らが王』

ペガサスが俺に向かって呼びかける。

彼はレイロさんの後ろから出てくることこそしなかったものの、興奮を隠しきれないように風になびく尾が嬉しげに揺れていた。

『ペガサス、お久しぶりだね』

『えぇ、ご無沙汰しております』

イチルの肩にいる俺を見上げる。

『あなた様が旅立たれてから半年…、我ら聖獣にとっては短い半年ですが、あなたは変わられた。とても凛々しく、お強くなられた』

『確かにいろんなことがあったけど、今、小鳥じゃなくても鳥の姿だよ?分かるの?』

『勿論ですよ、我らが誇り高き王』

俺達の会話にレイロさんが瞠目する。

鳳凰がいることは事前に知っていただろうし、鳳凰の姿では初めて会う。だが、かつてペットと勘違いされた小鳥と同じ声をしている俺、そしてペガサスの言葉に硬直していた。

あまりにショートするものだから、小鳥姿に戻ってレイロさんに手羽先を振ってみた。

『おーい、レイロさーん!』

そこでやっとハッと我に戻り、

「わ、私のことはレイロとお呼びください、風の始祖様。今までの無礼を、」

ピシッ、と惚れ惚れする敬礼を見せてきた。

『いや、無礼なんてされた覚えがないけど』

というより、風の王だからってそんなに畏まらないでほしい。むしろ俺が緊張する。

苦笑いでレイロさんを見て、太陽の位置を見た。カルナダ様と約束した時間は近付きつつあって、もう広間に向かった方がいい。

だが、ふと視界の端、目立たない塔の陰にひっそり隠れているものを見付けた。

キラキラと煌めく黄金色の塊。

その見慣れた色を認識した瞬間、俺は翼を広げていた。俺が飛んだのを見て黄金色の塊はビクッと跳ね、その場から離れようとしたが、この俺が逃がそうとするはずもなかった。

『イチル、先行ってて。俺は寄り道する』

「お前ってマジでふらふらするよな」

『すぐに行くから』

「…わぁーったよ」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。