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8.


戻ってくる道中でまた懐かしい人に会った。

ルイとピィたんだ。

俺達は彼らのレストランで食事をして、ルイは見事にイチルを覚えていた。俺を檻に入れたことをまだ申し訳なく思っているらしい。

さらに、衣装の関係により俺は人形になっていないが、ピィたんが俺を風の王だと紹介すると、ルイの魂が遠くに飛んでいった。激しく謝られたが、勿論、全く気にしていない。

で、俺達が学校を設立すると知ると、ルイは恥ずかしげに言った。食堂で働きたい、と。

フライング応募のうちの一件である。

食堂は学校になくてはならない場所だし、ルイの両親も同意した。何より、ルイが作る料理が絶品で、シェフ一人目に決定した。ピィたんは食材の管理を担当してくれるらしい。

で、王都に近付き、セットレイア王国の近衛騎士団から護衛がよこされた。

本来なら国境を越えたあたりで来てくれるはずだったが、煩わしい、とイチルが手紙で断った。俺達五人に護衛は不要だ。

王都に入った途端、騎士達が現れた。

見たことのある漆黒の軍服に身を包んだ彼らはこれまた見たことのある顔ぶれで、相手国王に跪礼をした。偶然にも、イチルに剣技で負かされたあの騎士達だったのだ。

顔に見覚えがあるのは彼らも同じで、イチルを見上げたまま口は間抜けに半開きだ。

病死したはずの第二王子。

だが、悠然と揺らぎのない笑みで彼らを見据え、せっかくの病死設定を殴り捨て、イチルは言い放つ。久しぶりだな、と。

死人が生き返った瞬間だった。

そこからは口から飛び出す魂を気力だけで押さえた騎士団を従え、めちゃくちゃ土地勘のある我らが陛下は王城に向かった。余談だが、騎士達の方がよほど死人のようだった。

白馬で城下を走るイチルはここでも大人気で、若い女の子なんか二度見で終わらないほど凝視する。目がうっとりして、頬が薄紅色に染まっていく彼女達はまさに恋する乙女だ。

で、新興国の陛下に威信を持たせるため、俺は鳳凰の姿になってイチルの肩に乗った。繰り返すが、イチルの威信のためであって、断じて女の子の熱い眼差しに拗ねたわけじゃない。

だって、イチルが俺のだってことは決定事項で、誰かと争う必要もない。俺は余裕だ。

そして、今に至る。

見上げる城門は何も変わっておらず、だが、俺達はもうあの頃の俺達じゃない。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。