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6.


最後に、始祖である仲間達。

律儀なケルベロスは祝福を言いに来てくれた。愛くるしい子犬の姿で。確かに頭が三つもある猛犬が出没すると町が混乱に陥るが、だからといって瞳がきゅるるんの姿で来られても困る。

俺が鳳凰にだけでなく小鳥にもなれるように、ケルベロスだって子犬になれるが、気付かなかった俺がなでなでしまくった。で、子犬は俺に撫でられながら至極真面目な表情で言った。

おめでとう、と低く響く成人男性の声で。

その時の衝撃はきっと忘れない。

因みに、もう亡くなったが、一緒に旅をしてくれたあのヒッポグリフも俺の仲間だった。イチル達には内緒にしているが、暇ができ次第、ラニアを訪れて彼の墓参りをする予定だ。

墓と言っても遺体も何も残っていないが、それでも俺は墓標を建てるつもりでいた。

俺達は確かに幸せになった。だが、だからといって亡くなった仲間を、犠牲の上に平和が成り立っていることを忘れてはならない。

たくさんの聖獣が堕ち、死んだ。あのヒッポグリフだけ贔屓していることになるが、言葉を交わし、目線を交わし、寒い夜を共に過ごした彼を特別扱いしないのは無理だった。

この贔屓だけは許してほしい。

最近、城下にガラス細工のお店ができた。そこの紋白蝶の細工がとても綺麗だから、それを彼への手土産にしたいと思っている。

そして、フェンリルとアルテミス。

あの時の氷と同じ原理で、朝起きたら窓ガラスにフェンリルが映っていた。隣にはアルテミスもいて、二人でお祝いの言葉をくれた。

フェンリルが相変わらず寒い親父ギャグを言おうとしていた。だが、俺は朝起きて一番に寒いギャグを聞きたくなくて窓を開け、彼が映るガラスを外に向ければ、親父ギャグを言った瞬間に寒すぎて氷やら霜やらが一瞬にして現れた。

アルテミス曰く、氷の精霊達が興奮しているのだとか。…それってどうなんだろう。

結局、俺はカーテンを閉じた。

因みに、カーテン越しにフェンリルが言うには、つい最近ユニコーンに乗った王子様の夢を見たのだとか。ユニコーンの尻尾がサラサラで、ギャグを連発しながら追いかけたと。

見た目は凛々しい巨狼でも、中身は尻尾を追いかける犬のレベルで間違いない。

どうしてユニコーンがよりによって氷の王の夢を通路に選んだのかは不明だが、不運なカルナダ様はきっと心身共に寒い思いをしたのだろう。トラウマにならないことを祈る。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。