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3.


ウィンソフィリア王国に属するのは当初、五人しかいなかった。旅のパーティーメンバーだ。

だが、なんと、この三ヶ月で移民や移住の希望申請が数百件以上届き、問い合わせは軽く千件を上回った。この理由は二つある。

一つ目。

あの潤いの雨と虹だ。

あの戦いの少し後、霧雨だった雨は土砂降りに変わり、何日もの間降り続いては砂漠の大地を徹底的に潤した。それはもう、気が付いたら城の隣に湖が広がっていたほどに。

雨が降る範囲は次第に広がり、虹もまた移動していった。城の一帯はとっくに雨が止んだが、風の精霊達が教えてくれるには、国土の辺境の地では今なお霧雨が降り、虹がかかっている。

そして、俺がイチルに言ったとある言葉がなぜか流行って、ジングスになっていた。

虹の根元には幸せがある。

フェニックスの加護が消える前、砂漠に命はないと思っていたが、どうやらそれは間違いだったらしい。実際には、砂漠を住処とする蜥蜴や蜘蛛などの小型の聖獣が生活していた。

俺達が戦っていた時、彼らは物陰に身を寄せあって、戦いの余波から避難していた。

土砂降りになった途端、雨から逃げようと城に上がってきた聖獣達を見て絶句したのはいい思い出だ。気迫がちょっと怖かった。

始祖同士の衝突は歴史的に見ても稀で、目撃して興奮した彼らはあの言葉も聞いていたのだ。雨が上がった途端、話を自慢しようと意気込む彼らは大陸中の国々に走っていった。

で、内容が若干変わったのだ。

虹の根元には幸せがある。から、あの奇跡の虹を見た恋人達は永遠に結ばれる、へと。

俺の経験上、聖獣達が伝言ゲームをやると必ず失敗する。予想に違わず、虹を見れば願いが叶うだの運命の人に会えるだの様々なバージョンが浮かんで、観光客が一気に溢れ出した。

因みに今では諸国からのツアーなんかもあり、人気の時間帯は朝焼けと夕焼け。そこで神秘的な景色に魅了されてしまった恋人達やら家族やらから、申請が大量に届いたのだ。

ホーリエが言っていた旅行もこれだ。

あの時、俺達は一緒に虹を見たが、どうしてもオーツェルドと二人っきりで見たいらしい。

マーメイドは城の隣の湖が気に入ったから、同行しないらしい。まぁ、契約主であるホーリエが呼べばいつでも向かえるだろうが。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。