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4.


この人は、体を売ろうとしている。

無理をしているのは見え透いていたが、彼は自分が借りた金を返そうと必死になっている。

こんな人が贅沢をするために金を借りる筈がない。きっと何かちゃんとした理由があって金を借りたら利息が膨れあがって返せなくなった、とかそんな事情なんだろう。

「…いくらだ」

「あ、ありがとうございます!一回なら、」

「こいつの借金はいくらだって聞いてんだよ」

「っ、!?」

イチルが唸るような低い声で言う。

彼は息を呑んだが、すぐにイチルがやろうとしていることに気付いて溢れそうなほど薄紫の目を見開いた。薄紅色の唇をわななかせながら、小刻みに何度も首を横に振っている。

「金貨一袋」

そう答えたのは男の一人だった。

「僕が借りたのは五枚です!」

「どんだけ待たせたって思ってんだよ、あぁ?利息に決まってんだろ」

「そんな…、」

まだ何か言いそうな男に、イチルが懐から袋を取り出す。その中に金貨がぎっしり詰まっているのを見せると、思いっきり男の足元に投げ付けた。

ちゃりん、ちゃりん、と何枚かの金貨が袋から飛び出して転がっていく。それを無感動に眺めながら、イチルが本気で三人を睨みつけた。

遊びじゃない。レイロさんと戦った時のような殺気。心臓を直接握られるような冷たい空気に、誰かが悲鳴を漏らした。

「それを持って消えろ。二度と現れるな」

ガチガチと奥歯を鳴らしながら、男達が何度も頷く。震える手で金貨の入った袋を掴み、転がり出した金貨も拾って、ふらふらと転びそうになりながら走り去っていく。

その後ろ姿が路地に消え、足音が完全に消えるまでイチルは鋭い眼差しで睨んでいた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。