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9.


『私に勝機はないのだろう?だったら、諦めなければな。惜しいが、私は失礼するよ』

『ん』

『はは、まったく素直なお方だ。…だが、そう遠くないうちにまた会うことになるだろう。あなたとも、もちろん、彼とも。私の力が必要であれば、喜んでお貸ししよう』

光の粒となってユニコーンが消えた。

イチルが拗ねた顔をした。ガタッ、と大きな音がしてそちらを見れば、獅子に続いてレイロさんが腰を抜かしていた。呆れ顔のペガサスが彼を背中に乗せ、一礼してから開放的な天井から飛び去る。

それを見届けてからドラゴンはまた小さくなり、カルナダ様の肩に乗った。放心状態のカルナダ様の頬をペチペチと軽く叩けば、彼はハッとして我に返った。

「と、…とりあえず、」

言葉が途切れる。

カルナダ様も何を言うべきか分からないらしい。

「イチルは部屋に戻りなさい」

「聖獣がいなくても俺は旅に出られます」

「私の判断は追って知らせるから」

「…はい」

イチルは明らかに落胆していた。あれだけの強さの聖獣を、あれだけの数を召喚したのに、どれとも契約できなかった。この現状でカルナダ様が旅に出る許可を下す筈がないだろう。

だが、カルナダ様は迷いと畏れを顕にした眼差しを俺に向けては、また視線を泳がせた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。