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10.

※カルナダside

「あれは、なんだい?」

その声は情けなくも震えていた。

正直に言って、今回の召喚にたいした期待は抱いていなかった。戦闘用の聖獣じゃなくても、旅のパートナーとなる穏やかな聖獣が現れればいいと、そうとしか思っていなかった。

だが、蓋を開けてみればどうだ。確認出来ただけで四体はいる。しかも、そのうち三体は滅多にお目にかかれないSランクだ。炎のサラマンダー、雷のグリフォン、そして、光のユニコーン。

さらに、あの風はSランクからしか効果を発揮しない制御石を砂にして、高位の聖獣を三体一気に蹴散らした。風は光に攻撃出来ないが、それでもユニコーンはああ言っていた。

干渉を受けない光でよかった、と。

『もう予想できているんだろう?』

「…まさか、」

『そのまさかだよ。僕はちゃんと君に言った筈だ。彼らは君が考えているよりずっと強い、とね』

「…あれは、風の王?」

きっとそうだ。

でなければあの風は説明がつかないし、何よりドラゴンが同胞と呼ばない。六属性の王はどれも気位が高い。真の意味で同等でなければ、ドラゴンがそう呼ぶはずもない。

だとしたら、あの場には高位十二体のうち約半数が揃っていた。今さら分かった真実に、体中の鳥肌が一気に立ち上がった。

『だが、彼はまだ雛だ』

「雛?」

『だからね、カルナダ、この旅は僕の幼い同胞にとっても、君の弟にとっても、成長させる旅になる。黙って背中を押すことを勧めよう』

風の王が傍にいるなら、心配はいらない。いくら幼くても実力は目の当たりにしたし、傷つけようと企む者がいたならば風の精霊が怒り狂って、相手を切り刻むだろう。

だが、気になることがもう一つあった。

あの小鳥の声だ。イチルが召喚を始める前まではぼんやりと聞きにくかった声が、はっきりと聞こえるようになった。どうやら、思っているよりも彼の成長は速いらしい。

「分かった。旅を許可しよう」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。