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7.


カタカタ、と空気が震える。

『どいてよ。その人は俺のなんだけど』

思わず漏れた言葉も終わらないうちだった。小刻みに振動していただけの風が、吹き荒ぶほどの暴風になったのは。

鎌鼬(かまいたち)のように鋭さを帯び、刃物と化した風が暴れる。それは金魚が出てきた水を氷の器もろとも粉々に破壊し、炎のトカゲを裂いて、かき消した。

びゅうびゅう、と風が渦巻いて、唸る。

俺にとっては果てしなく広いと感じるこの部屋も、暴れるのには足りないと言いたげにありえないスピードで駆け回り、壁や床に亀裂を入れていく。

制御石が眩しいくらいに輝き出した。だが、ピシッ、と嫌な音がしたかと思うと深い亀裂が入り、一瞬のうちに砕け散った。欠片ではなく、もはや砂のように粉々になった制御石は、風に拐われて消えていった。

「そんな、制御石が砕けた!?」

驚きに染まったカルナダ様の声がする。

だが、それでも風は止まらない。

びゅうびゅう、攻撃的な音で唸る風はついに全てのステンドグラスを割った。数え切れないほどのガラスの破片が舞い散る。不幸中の幸いと言えば、風は中から外に吹いたから破片が部屋に落ちることはなかった。屋外からガラスの落ちた音が続く。

風はまだおさまらない。床に獣のような深い爪痕を残しながら手当たり次第に破壊していく。だが、イチルには少しも向けられなかった。

一人だけぽかんとした顔で立ち尽くしている。

風が獅子に向かう。カルナダ様が水の防御壁を作り出した。水はカルナダ様の得意な属性ではないが、雷に防御魔法はないから苦肉の策だったんだろう。だが、それはこの風を止めるにはあまりにも無力で、一瞬でかき消された。

勢いを削がれることなく、むしろスピードを増しながら獅子へと向かう。その隣にカルナダ様がいるのを見て、ドラゴンが割って入った。

猫程度の大きさしかなかったドラゴンが、瞬きの間に五メートルはありそうな巨大な姿へと変貌を遂げる。カルナダ様と獅子を庇うように翼を広げ、彼は風に向かって吼えた。

風と雷がぶつかる。ちょうど相殺した二つの属性は辺りに被害を出しながらも徐々に落ち着き、静まり返っていった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。