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6.


(なんだ、ちゃんといるじゃん)

契約を望んでくれる聖獣が、こんなにも。

しかも、他のは分らなかったけれど、最後のは絶対にユニコーンだ。稀少な光属性のSランク。そんな聖獣がちゃんといるじゃん。

(だったら、俺が一緒に旅に出る必要は…)

ないじゃないか。

そりゃそうだ。魔王を討伐しに行く旅で何も役に立たないちっぽけな小鳥よりも強くて格好いい聖獣の方がイチルだって嬉しいんだろう。

あの巨大なトカゲだって、雄々しい獅子だって、ユニコーンだって、普通は一体しか現れない召喚にこれだけ強い聖獣が揃って出てきたんだ。イチルは好きなのを選び放題じゃないか。

…俺なんて、この旅に必要ないんだ。

だって、ほら、一緒に行くって意気込んでいたのは俺だけで、イチルは最初から俺を連れていく気なんてなかった。本当に寂しくないんだ。喜んでやるべきなのに、とても悲しい。

(嫌だなぁ…)

これからはイチルのポケットに入ることも出来なくなって、あの不機嫌な顔をおちょくってやることも出来なくなる。

イチルはきっとすぐに注目されるんだろう。強い聖獣と契約したんだ、って。それで、その隣にいつもいるのは俺じゃなくなって、いつしかイチルの劣等感が消えて、笑うようになって。

(…ものすごく、嫌だ)

突然出てきたくせに。

今までイチルに魔力を与えなかったくせに。

今まで助けようともしなかったくせに、イチルが契約を望んだ瞬間に都合よく出てくるなんて、…そんなのずるいよ。

(俺だってイチルの傍にいたい)

俺に力があれば、どれだけよかったんだろう。イチルに通じる声があれば、どれだけよかったんだろうか。だが、それは願うばかりで現実にはならなくて、俺は黙って見ているしかない。

なのに、この時の俺は、その事実すら忘れていた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。