※カルナダside
黄金の瞳が丸まっていく。
「どうして私を守った?」
「え?なんでそんなことを聞くんだい?」
「聞き方を変えるよ。どうして私だけを守った?…どうして他の仲間を守らなかった?」
思ったより静かな声だった。
だが、この至近距離にいる彼に必ず届くと確実していたし、何より一瞬だけ気不味げに泳いだ視線が聞こえたという証拠だった。
「…届か、なかったんだ。遠くて…」
「へぇ、」
今度は低い声だった。
「雷の王たる君がまさかそんなことを言うとは…。馬鹿馬鹿しい言い訳だ」
あぁ、不愉快だ。気に入らない。
胸の中でいろんな考えが混ざる。まるで仲間を見捨てるような行動が気に入らない。私の力を見下さないでほしい。…私は身代わりだと知っているのに期待する自分が愚かで、嫌になる。
そんな感情を八つ当たりするように、もしくは彼に力を見せ付けるように、近くにいた魔獣の一頭めがけて容赦ない雷を放った。
バリバリ、と裂けながら地面を張った雷は今まで私が放った魔法の中で一番攻撃的だった。
「雷の王、ドラゴン」
彼が硬直したのが分かった。
だって、彼と契約してからのこの十年、二人っきりの時にドラゴンと呼んだことは一度としてなかった。いつも名前を呼んでいたから。
雷に真っ二つにされた魔獣はパタリと砂の上に倒れ、それで舞い上がった砂漠の細かい砂がまた落ち着くよりも早くに新たな砂となり、崩れて原型を失い、その砂もまた溶けて自然に消えた。
「私を侮るのはやめてもらいたい。君の庇護下でしか生きられないほど私は無能じゃない」
バリッ、と私の雷が走った。
「そして、戦う気もなく仲間を守る気もないならば、…この戦いに介入してくるな」
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。