※カルナダside
「おっと、危ないね」
天地を揺るがす爆音。
だが、その灼熱の爆風がここに届く前に呑気な声が聞こえたかと思うと、黄金に煌めく鋭い稲妻が駆けていく。それは爆風を切り裂き、猛烈な風は二つに割れて私の傍を駆け抜けた。
私から離れた位置にいたイチルや他の仲間達は爆風は食らって、体勢を崩すのが見えた。叩きつける砂嵐。悲鳴じみた馬の嘶き。
だが、私だけは服すら靡かなかった。
彼らには目もくれず、目の前にいる綺麗な彼は安心したように柔らかく微笑んだ。
縦長の細い瞳孔を持つ瞳を細め、優しく紳士的に確かめるように私の頬を撫でる。馬に乗っていない彼は私を見上げ、ホッと安堵の息を吐く。上品に輝く琥珀色のピアスが揺れる。
ドラゴンの人の姿を見たのは実に十年ぶりだ。
だが、彼はやはり美しい。
人間離れした神々しい美しさだ。息を呑む暇もなく目を奪われて、彼の指先が触れた頬から痺れるような熱さが顔に広がっていく。嬉しいんだ。片想いしている彼のこの姿を見れて。
なのに、どうしてだろう。
「怪我はないね、カルナダ」
どうしようもなく、…苛ついた。
「まったく、少し激しすぎやしないかい」
呆れたように呟くドラゴンに言葉が出ない。
守ってくれたことに感謝すべきなのに、嬉しいはずなのに、どうしようもなく心の中に苛つきが募ってむかむかして不愉快だ。
私だけに注がれた優しい眼差し。愛しさのこもった眼差し。ドラゴンは至極丁寧に私に手を伸ばすと、ユニコーンの上から下ろしてくれた。そして、宝物のように繊細に触れてくる。
私は、
「僕の傍にいるんだよ。安全だか、っ、」
パチン、と、
「…カルナダ?」
その手を叩き落とした。
[ 489/656 ]
prev /
next
[
mokuji /
bookmark /
main /
top ]
王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。