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3.

※ホーリエside

「ホーリィ!!大丈夫か!?」

ツェトが馬から降りて走り寄ってくる。

地面に転がった体勢から助け起こされて初めて自分の指先が震えていることを知った。

「僕は大丈夫」

さっと視線を走らせて確認すれば、他の皆も大丈夫そうだ。だが、それぞれが唖然として空を見上げている。それだけ今僕らの頭上で繰り広げられている戦いは激しいものだった。

巻き添えを食らえば一発で死ぬ。

その時、ドク、と心臓が嫌に鳴った。

始祖達への畏怖とは違う嫌な予感。産毛まで粟立ちそうな寒気に思わず喉が引き攣って、頭に全身に本能の警鐘が響き渡る。

────マーメイドッ!

爆風に流されたのか彼女の姿が少し遠い。

────いるわ。

────僕の代わりに冷却の魔法を維持して!

────お出ましのようね。…分かったわ。

空気中に細かい水滴が満ちたのを確認して、自分の魔法を解く。それだけで魔力の消費量がグッと減って体が楽になって軽くなる。ツェトの腕を控えめに押しのけて、前を強く睨んだ。

今、空気中に満ちているのは水魔力。僕の氷よりも圧倒的に防御に優れている。だが、それでも油断はほんの僅かも許されない。

「ツェト、構えな。来るよ」

「は?来るって何、…が…、」

言葉が終わらないうちに地響きが起きた。

砂の中から現れたのは無数の魔獣だった。

尾を振り上げる巨大なサソリ。二本の牙が長く、鋭い爪は易々と肉を裂けそうな虎。耳が片方ないハイエナの目は血走っていて、一歩、また一歩と獲物を見る目で歩み寄ってくる。

数えるのも諦めたくなる数。彼らに共通しているのは黒く染まった体と鮮血色の目。そこに理性と呼べるものなんてなかった。

「へぇ、お前達が僕らの相手だって?」

いいよ、と口角を吊り上げた。

「おいで」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。