※ホーリエside
空が爆発した。
まさにそうとしか言えなかった。
真っ赤に燃え盛る炎と鋭い音を立てる風が正面衝突し、空が夕暮れのように染まって互いが互いを殺す。強くぶつかり合い、空に霧散する風を炎が焼き、揺らぐ炎を風が一刀両断した。
本来見えないはずの鎌鼬は炎をまとい、灼熱の炎が無数の風の刃に刻まれて消される。
そして、轟く爆発音と爆風。
鼓膜どころか体全身を揺らす轟音に思わず硬直し、手が勝手に耳を押さえようとするより早く焼けるような風が叩き付けられた。
「ぅっ、ぐ…!」
あまりの暑さに息ができなくなる。
二人の始祖が衝突するスピードは予想を遥かに越していた。防御魔法を発動するより早く、いや、反応する時間すら与えてくれず、ただ片腕を上げて爆風から頭を庇うので精一杯だ。
一瞬遅れて馬が嘶(いなな)く。
鋭い悲鳴のような、もしくは断末魔のような甲高い嘶きの直後、爆発に驚いた馬は前足を上げて後ずさった。当たり前だ。こんな爆風を浴びて僕だって正気を保ってられなくなりそうだ。
「ちょ、っ、」
バランスを崩したのは僕の方だった。
まだ硬直して上手く動けない手はきちんと手綱を握れず、馬から振り落とされてしまった。
「ホーリィッ!!」
ツェトの切羽詰った叫び声。
ツェトとイチルの馬も同じ反応をしたが、馬の扱いが上手い二人が振り落とされることはなかったらしい。パニックに陥った僕の馬は砂に足を取られながらも、そのまま駆け出した。
そして、僕の目の前で、
「…嘘、でしょ」
炎に焼かれた。
突如空から降ってきた炎が馬を呑み込んだかと思うと今度は嘶く暇もなく焦げて灰となり、灰が崩れて黒ずんだ骨となった。砂の上に落ちる。
「…は、はは、…助かった」
あと一歩で僕もああなっていた。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。