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14.


「さて、最終忠告だ、風。そなたが引け」

ドスの効いた低い声。

城を包む炎の勢いが増して、舐めるような真っ赤な舌が空に伸びて焼こうとする。

乾ききった砂は風にさらわれ、炎の中に落ち、真っ黒に焦げていく。フェニックスの瞳の奥の殺意の炎も静かに勢いを増していった。

「さもなくば、骨まで焼き尽くしてくれよう」

チリッ、と空気が焦げる音がする。

だが、今更怯えなんてしなかった。

俺の意志一つで風が動き、燃え盛る業火を斬った。形のないはずなのにそれは見事に真っ二つに斬れ、炎は風の中に溶けていく。

びゅう、びゅう、と何よりも早く、鋭く駆け回る風が牙を剥き、今にも飛びかかろうとする虎のようだ。鋭い牙を、研いだ爪を獲物に向け、息を潜めて虎視眈々と好機を狙う。

風の精霊達が次々と集まってくる。

俺は感じることができないが、きっと炎の精霊達だってこの場に満ちているだろう。

「できるもんならやってみなよ」

あぁ、気分が高まる。

ドク、ドク、と心臓が煩い。

恐怖は微塵もない。炎の攻撃力は高くても彼が翼を持つ聖獣である限り、この空を飛ぶ限り俺の領域にいて、俺の支配下にある。

「あと一つ撤回してほしいんだけど」

勝機は充分だ。

「先代を愚かって言ったのが聞こえたんだけどさ、少なくても白虎は自分の命を代価にして世界を守ろうとした。…人間を、聖獣を、精霊を」

虎の唸り声が聞こえた気がした。

それは揺らぎのない凛々しい声だった。

ただ、その声には隠しきれない悲しさと切なさもあって、しなやかで強かな虎は一度俺の背中を押すと風の中に紛れて消えた。俺の錯覚かもしれない。だが、確かに背中を押された気がした。

「あんたよりはよほど立派な王だったよ」

そして、虎が姿を消してなお勢いを弱めない風がついに天まで焦がす炎と衝突した。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。