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12.


「うん、知ってた」

「ならばなぜ引かぬ?今代の風よ、先代のように愚かに死に急ぐでないぞ。この件に介入せぬ限り俺はそなたと戦う気はない」

「それは残念。あんたが手を引いてくれさえすれば俺にも戦う気はないんだよ」

フェニックスは表情を変えない。

だが、刺々しい殺気はそのままだ。

ピリピリ、と肌が粟立つ。暫く睨みあっていたが、ふと視線を逸らしたフェニックスは何かを見付けたらしく呆れた目で溜め息を吐いた。

「…そなたもそちらか、雷」

威圧感の滲む声。

だが、それに少しも動じず、ドラゴンはカルナダ様の腕の中で丸まりながら大きな欠伸をした後、ようやく頭を上げてフェニックスを見た。

瞳孔の細い爬虫類の瞳が静かにフェニックスを映す。そして、ゆっくりと翼を広げて腕の中から飛び出し、若い男性の姿となった。

鱗と同じ色の黄金の髪がさらりと白い首筋を流れる。やはり瞳孔の細い瞳が眩しそうに細まり、陽射しから隠れるべく白い手袋をした手が黒いハットをずらす。琥珀のピアスが揺れた。

「いや、僕は中立でいさせてもらうさ」

形のいい薄い唇が困ったように笑った。

「中立…?」

「君達の争いには介入しないよ。僕はどちらの味方になる気もないし、…何より三王の争いなんて地形すら変わりかねない」

「ならばなぜこの場に来た?」

「それは……、王としての責務さ」

ドラゴンが一瞬言い淀んだ。

そして、苦笑いのような照れ笑いのような曖昧な微笑みを浮かべた。だが、静かな瞳のその奥に俺達と同じ譲れない光があった。

「あとは君達と同じ理由。…彼が頑固でね、危ないのに来るって言って聞きやしない」

後半はとても小さな声だった。

だから、空気の揺れに敏感な俺しか聞き取れなかっただろう。ドラゴンがカルナダ様の方にちらっと視線を投げかけたことも、彼に向き合った状態でいる俺にしか見えなかった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。