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8.


白亜の城を取り囲む城壁にも炎が渦巻いており、それをどうにかしない限り入ることは難しそうだ。だが、周囲を見回してみても人影はなくて困り果てた時、ひんやりとした冷気を感じた。

その直後、地面から氷が現れた。

バキバキ、バキバキ、と凄まじい音を立てる氷は砂漠にはあまりにも不釣り合いで、そして、あっという間に城壁の一部を呑みこみ、炎を姿そのままにその透明な内部に凍りつかせた。

透明な氷の中に揺らいだまま時間を止めたかのような真っ赤な炎。あまりにも不自然なそれは、バキッ、と一際大きな音を立てて割れた。

城壁もろともに。

氷と石の壁が地面に叩きつけられて砂が舞う。その砂を俺の風で払えば、後ろから少し呆れたような溜め息混じりの声がした。

「なぁにぼんやりしてんの。正面突破だよ?」

『いや、豪快だなって思って』

ホーリエが片眉を吊り上げた。

「当たり前でしょ。僕達、喧嘩に来たんだよ」

喧嘩。

確かに最終手段は武力行使だ。

だが、この範囲を、いや、地平線まで砂漠が広がっているから実際には俺達が見ているよりも広大な土地を砂漠にした炎の王との衝突は、喧嘩なんて生温いものでは済まされない。

『…できれば喧嘩は避けたいな』

その言葉が終わらないうちだった。

『っ!!』

斜め前から殺気を感じたのは。

敵意なんかじゃない。殺気だ。

警戒や防衛には到底当てはまらない、ここから消し去ってやるという強烈な殺気。

この陽射しのようにジリジリと肌を刺し、鋭い眼差しに呼吸がとまる。少なくともこれだけ生きてきて俺はこんな明確な殺意を浴びせられたのは初めてだった。ピリ、と空気が張り詰める。

いる、と思った。

そして、その方向に手加減なしで思いっきり風を吹かせたのはほとんど反射だった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。