「それと」
『ん?』
次の言葉に絶句させられた。
「お前と一緒に未来が見てぇんだ」
それはつまり生きたいということ。
生きるために抗うということだった。
さっきイチルは最期まで戦うと言った。だが、それは厳しい現実から目を逸らしていないだけに過ぎなくて、諦めて自ら命を捨てにいくつもりは微塵もないと知って泣きそうになった。
言いたいことは山ほどあった。踏み出してくれてありがとうとか、俺が守るから大丈夫とか、絶対に一緒に未来を見ようとか。
だが、口から出てきたのは、
『俺、お前が死んだら他の恋人探すからね』
そんな可愛げのない言葉。
だが、イチルはクスッと小さく笑って、わざとらしく困った表情になってみせた。
「それは嫌だ」
『だったら死なないでよ』
「あぁ、勿論だ」
確証はどこにあるんだろうか。
そんなもの、どこにだってありはしない。
だが、そう強く信じて決して疑わないことで、口に出して約束することで、未来はきっと俺達に訪れるんだと保証されたような気がした。
『実は俺ね、喫茶店を開きたいの』
「一緒にやってやる」
『お前にできんの?コーヒー淹れたりするんだよ?使用人に世話されてきた王子様が他人の世話って…、ふっ、笑わせないでよ』
「そん時はもう王子じゃねぇかもな?」
『じゃあ、なんになってんの?』
どうか明日も、明明後日も、来年も、十年後も。
イチルが俺の傍で笑っていますように。
「お前だけのイチル」
そんな幸せな未来が訪れますように。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。