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4.


「天空に希望の光と安寧の闇」

イチルの凛とした声が、ただ響いていく。

誰も何も言わない。音すら立てない。まるでそこにはイチルしかいないとでも言うように、荘厳な儀式は幕を上げた。呼吸の音、いや、瞬きの音すらもよく聞こえるような完全な静寂だった。

「東に叡智の風、西に勇猛の炎、南に鋭敏の雷(いかずち)、北に慈悲の氷」

まだ何もない。不気味なほどの静けさが広がる。

夜明けは思っていたよりもずっと速いスピードで訪れ、先程まではほのかにしか差し込んでいた淡い光は、みるみるうちに量を増して強くなった。キラキラ、キラキラと色鮮やかな光をイチルに注ぐ。

「偉大なる六の王達よ、力を求めしことを認めよ。我が力に共鳴せし聖なる獣よ、今こそ我が前に姿を表すことを命ず」

初めに反応が出たのは、水だった。

風もないのに波紋が広がる。氷の器の中央から生じた波紋は端にぶつかって跳ね返り、また生まれた波紋と混ざりあって不思議な模様になる。それは繰り返せば繰り返すほど強く、速くなった。

蝋燭に灯されていた火が揺らめく。陽炎のようにゆらゆらと不確かに揺れる火は、虎視眈々とチャンスを待つように今はまだ動かない。

金の針の上で、バチッと雷が弾けた。バチッ、バチッと何度も弾けるそれは、回数を増していくごとに鋭さと高さを帯び始めた。ドラゴンの大きな目が、さらに見開かれていく。

たが、風に動きはなくて、依然として無風のままだ。だからこそありえない動きをする三つの属性の異様さが際立っていた。

「我が名は、イチル・セットレイア」

全てを唱え終えた。

まさに、その瞬間だった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。