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3.


「許可出来ない」

「事は急を要するんです」

「だからってお前が行く必要はない」

「俺が城に残る必要の方がないのですが。俺を城から遠ざけた方が兄様にもいいのでは?」

「っ、私は!…とにかく、お前は契約さえしていないんだ。それなのに魔王討伐などっ…。無茶にもほどがあるだろう!」

「だったら、今すぐ召喚をして聖獣と契約をすればいいだけ。…それとも、」

この数日で、イチルがカルナダ様をよく思っていないのは知っていた。イチルが避けているのでなければ、常に一緒にいた俺が今日になってカルナダ様との初対面を果たすなんてありえない。

この兄弟は一週間以上顔を合わせていないのだ。

イチルはカルナダ様に苦手意識がある。もしかしたら劣等感かもしれない。歴代の王族の中でも有数の強さを誇り、何にでもよくできた兄。魔力が強い王家に生まれたにも関わらず、魔力のない自分。

その差は特にはっきりと感じ取れるんだろう。努力で賄えるものならいいが、魔力量は生まれつきだ。努力しても乗り越えようのない壁が、イチルの心の中に劣等感を作り出していた。

噂によると二人の王子様の間で王位争いが起こっている。二人の意志を含まずに臣下の間で、だが。

当たり前のことだが、カルナダ様を王位に押す派が存在する。そして、理由はよく分からないが、イチルを押す派もいる。因みに、短い数分の間だとしても、カルナダ様は王冠の光に目が眩んで弟を蹴り落とそうとする人間には見えなかった。

イチルが口元に自嘲を浮かべた。

「兄様も、俺に契約は無理だと思うのですか」

カルナダ様の目が悲しそうにする。きつく握り締めた拳。彼の爪は力の入れすぎで白くなっていた。

俺にはイチルが自暴自棄になっているように見えた。城の中に居場所はない、ここでは息ができない、とでも言うように。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。