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3.


甲高い馬の嘶きと蹄の音。

勢いを殺すために馬は後ろ足だけで立ち上がり、行き場を失った前足が宙を掻く。上に跨った人が驚いて息を呑む音が聞こえた。

それにしても綺麗な馬だ。一切他の色が混じらない純白は神々しくて、光の化身のようだ。程よく筋肉のついた逞しい体。鼻の先から尻尾の先まで流れるような洗練されたシルエット。

そして、緩やかにねじれた一本の角。額から伸びるそれは、とても綺麗だった。

「…ユニコーン?」

白馬はバランスを取るために後ろ足だけで一、ニ歩下がった。そして、ついに前足が下ろされた。ダンッ、と床が心配になる重い音。

かつて一度だけ会ったことのある聖獣はほっと息を吐き、あの時と変わらない穏やかで優しい目を俺に向けた。毛並みには汗が滲んでいるが、それでもやっぱり爽やかだった。

『あぁ、久しいな、風の王』

「どうしてここに?」

『急いで会いたいと頼まれたんだ。私は仮想世界と現実世界を行き来する能力があるから、現実で移動するよりずっと速いんだ』

俺とイチルが跨っている人物を見た。

ユニコーンが言うには頼まれたらしいが、淡いアイボリー色のフード付きマントに身を包んだ人物が誰なのか俺には分からなかった。

マントは装飾が少なくシンプルであったが、落ち着いた品のあるものだった。だが、それを纏う人はさらに高貴な気がする。姿が見えないのに俺にそう感じさせるのは、この状況で動揺もせずにまっすぐ背筋を伸ばしていたからだろう。

そして、その人物は光輝くようでいて、ピリピリと鋭い雰囲気を纏っていた。

「失礼だけど、誰かな?」

女性だと思う。胸部に膨らみがあったから。

だが、女性の来訪者に心当たりはなかった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。