聖獣は自然から生まれる。
その前に聖獣は自然そのものである。
炎、氷と水、風、雷、光、闇。神聖な自然の力が形を持ち、意思を持ち、言葉を持ったのがこの世界に存在する聖獣というものだ。
つまり、きちんと両親から産まれてくる種類もいる。その両親も自然であるから、自然から生まれてくる事実は変わらない。
例外は各属性の上位二体、六属性合わせて十二体のSSとSランクだ。それにあたる聖獣達はそれぞれ一体しかいないから両親はいない。
上位の十二体の真名は自分が気に入った名前に決めたり、初めての契約者や仲のいい聖獣に決めてもらったりなどと方法はいくつもあるが、普通の聖獣は両親が決めるのが一般的だ。
『じゃあ、決めたら呼べなくなるの?』
真名はその聖獣の所有物である。
マーメイドだって俺をタクと呼べないように、名前を雛に与えれば俺も呼べなくなるのだろうか。…それは随分と寂しい。
『いいえ、名付けた人だけは例外よ。その雛が誰と契約しようと、または契約主との契約を破棄しようとあなただけはその名前を忘れることはないし、呼べなくなることもないわ』
『そんなことって』
『それが名付けることの特権であり絆よ』
…そんな重要な役割を、俺に。
雛がキラキラと輝く目で期待しながら俺を見る。俺はこの子の本当の母親じゃないが、かあさまと呼んでくれるのなら、この子がこの世界に来て初めての贈り物をしようと思った。
『…分かった。少し考えさせて』
真名はとても重要だ。
だから、この子に似合ういい名前にしたい。
『イチル、何かいい名前ある?』
こう聞いたのが間違いだった。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。