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雷の王子様


その人物は、息を呑むほど美しかった。

木漏れ日の光を受けてキラキラと輝く金の髪が風に靡いて、深淵のような青の目は威圧感なんかよりも知性の色が濃い。

イチルとよく似た顔立ち。イチルの三、四年先の未来を見ているようだ。だが、不機嫌そうな鋭さの代わりに穏やかな微笑みが浮かべられているだけで、印象はガラリと変わる。

地位は高いのに着ている服はそう豪華じゃなくて、上品で控えめな装飾がされた服を着こなす姿に嫌味はない。胸元に刺繍された王家の紋章が、彼の凛々しさを増していく。

名前を聞いたことは何度もあった。

だが、実際に会ったのはこれが初めてだ。

その人物、…カルナダ様が俺をちらっと見た後、苦笑いをしながら言った。

「すまない。いつも私の隣で偉そうにしている君が可愛らしいお客さんと楽しそうに遊んでいたから、つい気になって…」

「(カルナダ様だぁ。初めまして!)」

「初めまして、可愛らしいお客さん。私のことはカルナダで構わないよ」

「(だ、ダメだよ。王子様だもん)」

「私がいいって言ったらいいんだよ」

また断ろうとしていたところにカルナダ様の指が伸びる。指先で頬をくすぐられると、ぶわりと羽が立つ。そして、その指先は背中を通って、翼の付け根を程よい強さで触ってきた。

気持ちいい。ものすごく気持ちいい。マッサージのような手馴れた動きは、どこで習ったんだと聞きたくなるくらい上手くて、思わず目が細まる。猫ならゴロゴロと喉を鳴らしていただろう。

「(カルナダ様、もしかして鳥になった経験があるのー?)」

「ないよ」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。