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6.


体が浮く。足は地面に着いていない。

風は、…風は、どう描写したらいいんだろうか。ただ俺を持ち上げるのではなく、きちんとそこにいて俺が翼を羽ばたかせるのに合わせて気流を生み出してくれている。

初めての飛行にしてはとても安定していて、適当な枝に飛び移ることにも問題はない。どんどん高い場所に飛んでいっても、不思議と怖いとは思わなかった。むしろ気持ちが凪いだ。

まるで、ここが俺の領地だとでもいうように。

『こら、あまりはしゃぎすぎると怪我してしまうよ。…それにしても、さすがに飲みこみが早い』

「(大丈夫!風がいるから)」

それは本当に補助でしかなかった。いつどこに向かって飛んでいくのは全て俺の意志に委ねられていて、風はただそこに存在していて、優しく俺をサポートしていた。

ざわり、秋の風が木の葉を揺らし、俺の頬を撫でる。ありがと、と呟くと、それは気のせいか嬉しそうに揺らいで見せた。

…精霊は姿もなく声もないのに、俺には彼らの感情と意志がよく理解出来たんだ。

一通り心ゆくまで遊んで、ドラゴンがいる枝に戻る。秋の豊穣を連想させる金色の大きな目が、満足げに細められた。

『君ならじきに飛べるようになるよ。精霊の力を借りずとも、ね』

「(わぁ!本当に?)」

『嘘なんて吐かないよ。…で?』

ドラゴンが後ろに振り向いた。

心底呆れたような表情をしながら、それこそじとりとした目で溜め息混じりの言葉を出す。だが、そこには林しかなくて、誰も、…いや、違う。

脇にある木の後ろ、ちょうど陰になった場所に人がいる。俺には見えない。だが、確かにいる、と風が教えてくれる。それは敵じゃない、とも。

『何をしているんだい、』

そして、その言葉に仕方なく木の後ろから出てきた人物に、目を見張った。

『…カルナダ』

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。