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6.


俺はと言うと、ご飯を強請るべくイチルの隣に来ていた。俺は小鳥の姿なら場所を取らないからイチルは一人部屋を予約していた。もちろん、客は一人だからご飯も一人分しかでない。

ご飯も二人で分ける。不思議なことに小鳥の姿で満腹になれば、人間の姿になっても満腹のままだ。だから、食事の量は足りている。

ちぎってくれたパンをイチルの指から食べる。

小さくちぎっていてもジャムはきちんと塗られていて、その気遣いがとても嬉しい。

(このイチゴジャム美味しい…)

ゆで卵に手を伸ばすイチルを眺める。

俺は肉なら食べるが、やはり鳥である部分があるのか卵を食べたいとは思わない。だから卵料理はいつもイチルが全部食べる。

ゆで卵を掴んで、テーブルに軽くぶつけようと手を振り下ろしたところで事件は起きた。

「ひぃっ!?」

悲鳴を挙げたのだ、イチルが。

表情さえあまり変えないあのイチルが。

『何、どうしたの?』

イチルが素早くゆで卵を皿に戻した。

「卵が…、動いた」

「んなわけねぇだろ、兄さんよぉ。ゆでた後の卵だぜ?動いてたまるかよ」

「あんた大丈夫?まだ起きてない?」

剥いた自分のゆで卵に豪快にかぶりついたオーツェルドと、少し揶揄を含んだ声色のホーリエ。だが、それに反して恐る恐るゆで卵を眺めているイチルの表情はいつになく真剣だ。

つんつん、とゆで卵をつついている。

「マジで動いたんだよ…」

『いや、そんなわけないでしょ』

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。