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4.


身を切るような冬の風に体を震わせ、部屋に戻ろうとした時だった。宿の裏側、小さな川の傍から掠れるような細い息が聞こえてきたのは。

(ん…?)

激しい運動をした後のようなゼェゼェとした感じじゃない。そうじゃなくて、息そのものができないというか、ヒュウヒュウと掠れながら気管を通っていく空気の音だったんだ。

あまりに異常なその音が気になって、翼を広げて飛んでいく。部屋に戻るつもりだったが、朝食まで時間があるから構わない。

手頃な枝に留まれば小川のすぐ横に桶があって、水のないその中に大きめの魚がいた。

(あれって朝食になる予定の魚?)

少し離れた場所に宿の主人がいるんだから、きっとそれで間違いないだろう。

(…まぁ、可哀想なんだけどね。聖獣ならダメだけど、この魚って動物の方でしょ?)

弱肉強食は世界の理だ。

俺だって肉や魚を食べるし、見かけたものだけを助けるなんて矛盾している。

だから助けずに部屋に戻ろうとした。だが、翼を広げた瞬間、その魚が目を潤ませて助けを求めてるように震えながら鰭を伸ばしてきた。

『た…すけ…、ッ、ヒュウ…!』

『え!?』

思わず声が出た。

『聖獣!?』

喋れるなら聖獣だ。

ヒュウヒュウ言っていたから普通の魚だと勘違いしていたが、低位の聖獣、しかも普段は水の中にいる魚型なら水がないと喋れない。

水揚げされた時には喋れなくなっていて、宿の主人も気付かずに朝食にしようとしていたんだろう。動物なら話は違ったが、聖獣をみすみす殺させるわけにはいかなかった。

『え、え、い、今助けるから!』

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。