この数日、俺は西へ行ってきた。
西の最果て。
旅を始めるにあたって、俺達が最初に決めた目的地はそこだった。ノクトとオリオンが一戦を交え、二人して息絶え、魂を散らせた土地。
風の王としての移動速度なら素早く一目見てこれるだろうと思ったが、結果は予想外だった。西の最果てとはこの地、アルテラ共和国最西端の町トゥーグロッツェの別名だったのだ。
つまり、俺達は今、西の最果てにいる。
セットレイア王国の西に隣接するアルテラ共和国。国土が少ないながらも美しい国で、旧アルフォンラルグ王国の一部である。
アルフォンラルグは千年ほど前まで存続していたが、滅び、融合や開拓の後にその地に新しくできた国が今のアルテラ共和国だ。
旧アルフォンラルグの最後の王の名前を調べた。そしたら出てきた名前は、
(ノクト・アルフォンラルグ)
あのノクト本人だ。
千年前、ノクトが住んでいた城は長い時が流れたことにより今はもう存在していない。
だが、この地は確かに西の最果てと呼ばれる場所であり、聖剣が生まれた場所であり、俺が卵の時にいた場所でもある。
そして、アルフォンラルグ、今のアルテラ共和国の西の境界から魔獣が溢れてきたんだから、状態を確かめるべく見に行った。
そうしたら自分の目すら疑った。
(あれは…砂漠だった)
あまりにも不自然な光景だった。
冬には雪さえ降るこの緯度で唐突に現れた砂漠。豊かな針葉樹林の向こうに広がる砂漠は、まさに異様としか言うことができなかった。
乾ききった黄金の砂。だが、オアシスの見えない砂漠はかつて普通の土地だった名残を僅かに残し、かろうじてひび割れた地面が見えた。砂を舞わせる灼熱の風。雲一つない砂漠特有の空。
こちらは凍えるほど寒いのに、ほんの視界の先の地は商品砂漠で蜃気楼さえ揺らいでいる。
異様だった。
まるでこの大自然の中に人工的に線を引き、こちらは針葉樹林であちらは砂漠と決めたかのように不自然で、雪の積もった真っ白い地面は数センチ違うだけで乾いた砂が舞っていた。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。