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5.


『自分で飛べないうちは闇雲に羽ばたかずに精霊に助けを求めるといい。そのうちコツを掴んで、一人で飛べるようになるだろうさ』

「(精霊?)」

『精霊は自然の力。この世界には人間、動物、聖獣、精霊が存在する。精霊は僕らと違って姿も声も持たない。だけど彼らは確かにそこに存在し、意志を持っている』

「(分かるような分からないような…)」

『君も感じたことがあるんじゃないのかい?…風が自らの意志を持っていることに』

言われてハットした。

心当たりはたくさんあったのだ。

運動会でのリレーも、おかしいほどよく飛ぶ紙飛行機も、迷子の時の誘うような風も、…あの時に俺をこの世界に連れてきた風も。

幼い頃から起こっていた不思議な出来事の正体がようやく明らかになった気がした。…ならば、どうして風は俺の味方をしてくれるんだろうか。

『自分の翼を主として、精霊の力を補助にするんだ』

「(自転車で言うと補助輪みたいな?)」

『ん?じて…?ほ、ほじょ?』

ぽかんとする表情が少し可愛い。

「(いや、なんでもないよ)」

『とりあえず、精一杯羽ばたきながら飛びたいって精霊にお願いしてみたら?』

かなり大雑把な教え方だ。

だが、やってみる価値はありそうだ。翼を思いっきりパタパタさせる。乱れた風が発生するだけで体が持ち上がる気配はない。そこまではいつもと同じだった。

(飛びたい、飛びたいの!飛ばせて精霊さん!お願いだから手伝って!)

その時だった。

ふわり、と体が浮いたのは。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。