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雛であること


「(俺は聖獣になったの?)」

それが一番気になることだった。

『そうだよ。今の君は風属性の聖獣だ』

その答えには驚かなかった。意志のある風が俺をこの世界に引っ張ってきたんだし、ペガサスと会話できた時点で予想していた。

だが、あの風は一体何のために俺をこの世界に連れてきたのか、それはドラゴンにも分からないだろうから聞かなかった。

「(ランクは?どうして飛べないの?)」

『残念ながらEランクだ。でも、君はまだ雛だ。人間の赤ん坊でも練習しなきゃ歩けない。君も飛ぶ練習をすればきっと飛べるさ』

「(ちぇ、一番弱いのか。雛って?)」

『その言葉の通りだ。君の言う通り、君はいずれ成長する。…でも、今じゃない。ん、はは』

成長、という言葉に先程の啖呵を思い出したのか、ドラゴンの肩が震え始める。目も楽しそうに細められて、口角が吊り上がって長い牙が見えた。

ここでまた五分ほど爆笑されては聞きたいことを聞けないから、慌てて次の質問に移る。

「(ランクはずっとEのまま?)」

『んく、は、…君がどこまで成長するのか、あるいは何に成長するのかは僕にも分からない』

「(翼を持つものは全てが風属性なの?)」

『いいや、それは違う。確かに風属性のものは多くが翼を持つけど、僕やグリフォンなど翼を持つものは他にも存在する。炎の王フェニックスなんて鳥の形をしているね』

「(フェニックスに会ったことはある?)」

『あぁ、あいつな面倒な性格をしているよ』

フェニックスが苦手なのか、ドラゴンは耳をペタリと伏せた。ゆらゆらと落ち着きなく揺れる尻尾が生み出した風に、葉も揺れる。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。