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5.

※イチルside

『誤解しないで。風の王が私達に嘘をついているって言いたいわけじゃないのよ』

焦ったようにマーメイドが継ぎ足した。

「…お前達が言いたいことは分かるが、」

確かにたとえタクがどれだけ人間らしい感情を持とうと、どれだけ人間とそっくりの姿をしていようと、人間と聖獣の間にはどれだけ抗っても壊すことができない壁がある。

人間は両親から生まれ、聖獣は自然から生まれる。

人間はたくさんの属性を使えるが、聖獣が使役できるのは自らが属する一属性だけである。

死後、人間の体は残り、聖獣は自然に還る。

どれだけ魔力が高くても人間に翼が生えることもなければ、小鳥に変化することもない。また、精霊の存在を感じることもできない。

(…こんなにはっきりと異なっているんだ。そう簡単に変わるとは思えない)

仮にタクの話が本当だとして、この世界に来て初めて聖獣となって王位を継承したとしたら、…前の世界では本当に人間だったとしたら、

(風の王が不在だったこの千年間はなんだ?)

ケルベロスが言っていた。

王が死んだとすれば、通常すぐに新しい王が生まれる、と。ならばこの空白は異常だ。

だとしたら、導く結論は、

「タクはこの世界で生まれた、…聖獣として。だが、なんらかの理由で世界を渡り、自分を人間だと思い込んだまま育った、…か?」

ホーリエが硬い表情で頷いた。

そう考えるのが妥当だろう。向こうの世界に聖獣はいなくて、偶然にも自分も人間の姿になれるから何も知らずに育ってしまった。

世界ごとに時の流れが違うんだと思う。こちらでは千年もの歳月が流れていったが、タクが育ったあの世界ではたった十八年だ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。