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6.

※イチルside

「ご家族のことは聞いてる?」

「…いや、聞いてないな」

嘘だ。話してくれたことがあった。

両親はいたが、血の繋がった実の両親じゃない、と。名家に迎えられた養子で、孤児院の出だから本当の両親は分からない。話してくれたが、タクが頑張って話してくれた心の傷を勝手に話したくなくて、とっさに嘘をついてしまった。

(だが、それって、つまり、…もしかしたら、)

両親がいないんじゃないんだろうか。

人間は誰しも両親を持つからタクが思い込んでいるだけで、実は自然から生まれた。

そう考えれば全ての辻褄が合う気がする。小鳥のくせに翼の使い方を知らなかったことも、圧倒的な実力も、風の王が空位だった千年間も、聖獣になったと言ったタクの言葉も。全て。

「なぁ、ホーリエ、」

なに、とアメジストの目が俺を見据える。

その目に緊張が滲んでいたのは明らかだった。

「俺はあいつが聖獣だろうが、人間だろうが、どうでもいいって思ってんだ」

「はぁ?」

大きく、大きく、澄んだ紫色が見開かれる。

だが、叱責にも似たその眼差しに思わず浮かんできたのは苦笑いで、タクの顔を思い出せばその苦笑いが微笑みに変わるのが分かった。

「あいつは俺の聖獣で、…俺の唯一だ。それだけは変わらねぇし、それだけで充分だ」

「…まぁ、確かにモチヅキはモチヅキだね」

人間だろうが、風の王だろうが、関係ない。俺の隣に立って能天気に笑うあいつを、なのに、時折まさに王と呼ぶに相応しい堂々とした風格を醸すあいつを、絶対に手放さないと決めた。

何があろうと、それこそ俺達の歩む先奈落の底だろうと、最後まで手を取って互いに支えあって歩み続けると誓ったんだ。この魂で。

そこに人間か聖獣かは関係ない。

俺が共に生きると決めたのは人間でも聖獣でもなくて、俺の唯一であるあいつなんだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。